VOICE 05
ミニマルを実らせる“たくらみ”
- 松本市N様邸 ご家族3人
四つの北窓からの眺めに
一日一日の暮らしへの望みとその充実を思う
高台に立つ小さな家です。Nさんはここからの眺めが気に入り土地を購入しました。建坪は問題じゃない。尊敬する建築家・伊礼智さんが設計するような、小さくても居心地よく暮らせる家にしたい。最初からそう考えていました。
そんなとき、本誌37号で出合ったのがHASHIBA KINOIEの住宅でした。同社の小松さんが自ら設計したその住まいづくりに共感し、彼にわが家を任せます。
2階の子供部屋を含めても26坪足らずの空間を実りあるものにできるよう、小松さんは随所に〝たくらみ〟を巡らしました。
一つ目のそれは、北アルプスを見晴らす北側に設けた四つの窓です。寝室から洗面所へ向かうとき目にする窓は、爽やかな目覚めをもたらします。キッチンで食事の準備のとき目にする景色は、今日も頑張ろうという気持ちにさせてくれます。リビングの窓は、一日のあれこれが終わり、ゆったりした気分で眺めます。そしてお風呂では、暮れゆく山々と街の灯を見ながら体と心を温めます。
二つ目は、家族の居場所づくりです。やはり眺めのいいデッキでは、風呂上がりのビールを楽しむもよし、自転車の手入れに勤しむもよし、休日に家族揃って食事をするもよし。そのデッキへ出る窓の床は、リビングより少し高くてベンチ代わりになります。子供部屋に設けたヌックにも心躍ります。
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ウッドデッキは自慢の眺望を見晴らすテラスでもある。休日はここで食事をすることも多い。
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玄関アプローチは石の表情を生かした自然な仕上がりになった。
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建物高が低く抑えられ、一見したところでは2階建てに見えない。周囲の環境に馴染み、屋根や壁の色にと選んだグレーは、庭の緑を引き立てる。
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N邸は見晴らしのいい高台に立つ。北側から眺めて、ようやく2階建てと分かる、コンパクトかつ楚楚とした佇まいだ。
家族の一体感をもたらし
狭さを感じさせない視線の抜け、空間の抜け
お気に入りの風景に一日の望みとその充実を思えるよう、窓の配置と大きさの工夫で誘う。あるいは小さな家であっても一人の時間を愛おしめるよう、小さなきっかけをつくってあげる。その他にも家族の居心地を約束する仕掛けがありました。
たとえば、視線の抜けと空間の抜けも大きな要素です。玄関からダイニングに入ったとき、キッチン奥の廊下を2方向から見せることで、奥行きがあるように感じさせる点。ダイニングでは吹き抜けと勾配天井で垂直の抜けを、キッチンとリビング方向へ向けては水平の抜けをつくった点。もちろん、四つの北窓も抜け感に大役を果たしています。おかげで数字が示す以上の広がりのある空間の中、家族をいつも身近に感じることができます。
さらに、どこへも自在にアプローチできるキッチン周りの回遊動線や、適所に適量設けた収納は、育児に忙しい今も、再び夫婦二人で過ごす将来も、広さ19坪という1階だけでの暮らしを助けてくれます。
家族の暮らしを緻密にイメージし、無駄を削ぎつつ空間を実らせるHASHIBA KINOIEの巧みさを、この家で知りました。
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ダイニングは垂直方向にも抜けをつくることで伸びやかな空間に。
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キッチン周りは回遊できる動線にした。どこへ行くにもアクセスしやすいから、家事や育児の負担が軽減され、家族の協力も得やすくなった。
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家族の生活スタイルと動線を計算しつくして住まいの中心に置いた、家具のように美しいL字型の造作キッチン。
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食洗機や食器などをすっきりと収納した造作のキッチン。
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19坪台でもウォークイン・クローゼットを設け、廊下からも寝室からもアプローチできるよう工夫した。
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寝室から洗面所へ至る廊下の先にも、アルプスを見晴らす窓がある。
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子供部屋は二人目のお子さんも想定して設計されている。
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庭とのつながりが、暮らしに憩いと広がりをもたらしている。
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ダイニングからキッチンを望む。水平方向への視線の抜けが実際の面積以上に奥行きを感じさせる。
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ウッドデッキはリビングの床より一段高い。ウッドデッキへ出るために設けたステップは、本棚やテレビボードも兼ねていて、ふとしたとき腰掛けるのにも便利。
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リビングの天井は低く、少しこもる感覚が心に落ち着きをもたらす。窓の外へ視線を誘う効果もある。
OWNER'S VOICEオーナー様の声
- Q1
家づくりで一番大切にしたことは?
伊礼智さん風の居心地のいい住まい。眺望を生かすこと。
- Q2
こうしておいてよかった、と思ったことは?
1階だけで暮らしが完結するところ。回遊動線。適所適量の収納。
- Q3
HASHIBA KINOIEに頼んでよかったことは?
私たちの暮らし方や生活動線を丹念に分析し、要望を上回る家にしてくれた。資材高で悩んだときも支えてくれた。
PLAN
DATA
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敷地面積
219.57㎡
(66.29坪)
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延床面積
85.03㎡
(25.67坪)
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1F面積
63.92㎡
(19.30坪)
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2F面積
21.11㎡
(6.37坪)
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デッキ面積
10.30㎡
(3.11坪)
工法/木造在来軸組工法 基礎/ベタ基礎 構造材/柱:ヒノキ、梁:米マツ、土台:ヒノキ 断熱材/屋根:Green Air Foam 150㎜、壁:Green Air Foam 75㎜ 、基礎:立ち上がりGreen Eco Foam 90㎜・スラブ上Green Eco Foam 45㎜ 主な外装仕上げ/屋根:ガルバリウム鋼板、外壁:マヂックコートコテ仕上げ・ガルバリウム鋼板 主な内装仕上げ/天井:ビニールクロス・アッシュ無垢フローリング、壁:ビニールクロス、床:アッシュ突板フローリング・ビニール床タイル・タイルカーペット 開口部/樹脂サッシAPW330Low-Eペアガラス(アルゴンガス入り)、樹脂スペーサー・木製サッシプロファイルウインドーLow-Eトリプルガラス キッチン/造作キッチン(食洗機:ミーレ) キッチン熱源/IHクッキングヒーターAEG
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このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.41より転載しています。 こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。